ふと周りを見渡すと、藤本さんの姿が目に入った。
始めはいなかったから参加しないのかと思っていたが、彼女も遅れてきたようだ。
黒崎さんの姿を探していたようで、近くに寄ってきた。
やっぱり。
案の定藤本さんは、黒崎さんと隣の男の子の間に座りこんだ。
「恵里香、なんでこんな狭い所に入り込んでくるんだよ、あっちも空いてるだろ」
黒崎さんが少し嫌そうに言っているのを見て、もっと言え~!と心の中で叫んでしまった。
「いいじゃん別に?こっちの方が楽しそうだし」
目の前にあった黒崎さんのビールを一気に飲み干した。
「お前なぁー自分で頼めよ!」
間接キス・・・!!
それを見て心臓がドクンと音を立てる。
2人の近くに座っていた人達が、「2人は付き合ってるんですかぁ?」と笑いながら冷やかしている。普段は口が裂けても言えないだろうが、お酒が入った今だからこそ思い切って聞いてみたんだと思う。
その質問は誰もが気になっている事だった。
私は耳を塞ぎたくなった。
聞きたいけど聞きたくない。



