今夜 君をさらいにいく【完】



私をパイプ椅子に座らせ、温かいコーヒーを入れて持ってきてくれた黒崎さん。



「ありがとうございます・・・」



一口飲みこむと、体の芯から温まるようでほっとした。


その様子を見ていた黒崎さんも、近くのパイプ椅子に座った。


そして



「落ち着いたか?」



なんて首を傾げながら私の顔をまじまじと見るもんだから、思わず恥ずかしくなって目をそらしてしまった。



「安心しろよ、あの人はもう何もしてこない」



足を組み直した黒崎さんは、確信をついた言い方をした。



「ほ、本当ですか・・・?」



「ああ、結構気が小さい男だからな」



「黒崎さん、部長にあんな風な態度とって・・・まずいんじゃないんですか?・・・すみません、私のせいで・・・」



黒崎さんにまた迷惑をかけてしまった。


もしこのせいで黒崎さんがクビにでもなったらどうしよう。




「お前、俺がクビにでもなると思ってるのか?」



まるで私の心の中を見透かしたように言う。