今夜 君をさらいにいく【完】


はっきりと誰なのかがわかった。







黒崎さん――――――――――




黒崎さんは私に向かって人差し指を唇に当て、“シーッ”というジェスチャーをした。

そして次の瞬間、部長の携帯を後ろから取り上げた。




「うわっ!」



驚いて後ろを振り返った部長。




「く、黒崎君まだ残ってたのか!」




「部長こそ、こんなところで何やってるんですか」




部長に奪われないように携帯を高く上げて、画面を操作している黒崎さん。




「か、返しなさい!」




部長は背が低いため、中々黒崎さんの手に届かないようだ。




「・・・部長、これ盗撮ですよね?」




私の写メを部長に見せる。



夜の姿を黒崎さんに見られてしまった・・・。





「いやっ、これは・・・」




もう何も言い訳ができない様子。




「まぁ・・・他にも色んな子を撮ってるわけですか、暇ですね」




部長の携帯を片手でいじり、笑いながら横目で部長を見る黒崎さん。