今夜 君をさらいにいく【完】



数日後、俺の携帯に見知らぬ番号から着信があった。



「・・・はい、黒崎です」



『玲人か?』



なんと飯田先輩の声だった。大学を卒業してから疎遠になっていたので、最近では番号を変えても教えていなかったのだが。



「・・・飯田先輩ですか?」


『ああ、突然悪いな、今仕事中か?』


「はい・・・」



俺は隣の会議室へ移動した。



『篠塚に番号聞いたんだ』



篠塚は俺の大学時代の同級生で、同じサークルに所属していたため、飯田先輩とも交流がある。



「そうですか」


『急だが・・・今夜、ちょっと時間あるか?』


「今夜ですか・・・?」


『いや・・・少しお前と話したくてさ。新宿駅近くで待ち合わせでどうだ?』


「わかりました。19時には行けると思いますが」



駅の側にある居酒屋で会う約束をして、電話を切った。


正直、飯田先輩の方からコンタクトをとってくるとは思わなかった。


あれ以来、桜井とも挨拶すらまともにかわしていないというのに。


今あいつと話し合ったら・・・俺はひどいことを言ってしまいそうだ。現にこの前桜井を傷つけてしまっているし。



ガチャ・・・


その時、恵理香が会議室のドアを開けた。



「玲人、部長が呼んでるけど・・・」


「ああ、今行く」