「寒い。」 濡れながら、ようやく辿り着いた部屋は電気すらつけられていなくて肌寒かった。 そんな部屋で、雄志は本を読んでいた。 珍しく眼鏡をかけているその横顔に、不覚にもどきっとしてしまう。 「遅い。」 自分勝手に呼び出しておいて、労いもなく、こっちを見ようともしない。