町中にそれはあった。

 元々は町民の憩いの場だったらしいのだがそこに間借りする形で建てられたのだという。

 ――慰霊碑だ。
 4年前に病で命を落とした人々の。

「おじさん、おばさん、みんな。
 エフィ、帰ってきたから」

 そう言ってウォルトが花束を置くのに倣ってエフィも花を捧げる。

「リヴェズ、あんたも……」
「いや、僕はここでいいよ」

 ――ここに来る資格も、ないからね。

 それは口に出さず、少し離れたところから意外に泣いていないエフィを見つめていた。

 エフィは今までのことを必死に慰霊碑に――父と母に報告している。

 それが終わって間があって。

 ウォルトが慰霊碑の下の石を動かした。

「ここ、小さな供え物を入れられるんだ。
 なあ、エフィ。

 そのペンダント、ここに入れてみねぇか?」

「……え?」
 反射的にエフィの手が貝殻のペンダントを握り締める。

「ずっとお前が身に着けてたし、お前が帰ってきたって証拠だろ?」

 笑顔で言われ、エフィは押し黙った。
 ――やがて――

 ペンダントを外し、ウォルトに渡す。

「ありがとな。
 みんな、ほら、エフィも一緒だ」

 気が付くと、ウォルトが必死にリヴェズに目配せをしている。

「エフィ、こっちにおいで」
 ウォルトの意図を汲み取り、エフィを手招きした。

「それじゃ首元が寂しいね」
 言って昨夜ウォルトに見せたネックレスをかける。

 イヤリングと揃いのピンクオパールのものだった。

「……気に入らないかな?」

 気に入る気に入らないではなく、貝殻のペンダントを手放した衝撃が強いのだろう。
 それでも、

「ううん。ありがとう」
 そっと手でネックレスに触れながら笑顔で言う。

「じゃ、町の中案内するぜ。
 何日ぐらいここに居るんだ?」

 ウォルトが言って歩き出すと、2人も付いて行った。


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