「ヤダ、心花ちゃんったら大丈夫?すぐに流水で冷やして!
こっちはやっとくから」



「はぁい…」



オーブンから取り出した焼きたてのクッキーを、そう言って私の代わりに運んでくれたのは、この料理部の部長 一条忍先輩だ。


北欧系のクォーターらしくて、その日本人離れした端正な顔立ちに金髪はどの生徒たちの目も引いてしまう。

そんな忍先輩目当てで料理部に入部した生徒だって何人もいる。

口調がお姉系なのは、よくわかんないんだけどね。



だけど、そんな私は…



「おっ
焼きたての甘いニオイが、こっちからしてきた」



「あら、また今年もやってきたわね」



ガヤガヤする調理室の、更に奥までやって来たその人物の声に、私は1人胸を大きく高鳴らせた。