触れてみたい〜愛しい彼女の傷跡〜

せっかく逃げてきたのに、また甘ったるい匂いに包まれる。

吐き気までしてきた俺の横を何か小さいものが擦り抜けようとした。

俺はとっさにそれを捕まえる。

「おー。待ったぞーさー帰ろう。」

なんのことかもわからず冬花は目を丸くする。

俺の言葉を聞いた女子たちは、急に怖い目で冬花をにらみつけた。

冬花はこの状況についていけず、周りの女子の視線にびくついた。

俺は冬花の前に立って女子の群れから抜け出した。

「俺、こいつと帰るから」

一度振り返ってそれだけ言うと俺は冬花を引きずり逃げ出した。

冬花も訳が分からないまま、俺と一緒に走っていった。

駅前までくると、女子が追い掛けてこないのを確認して膝に手を突き、大きく息を吐いた。

「試合でもないのにこんな走るなんて聞いてねぇよ…。」

せっかく拭いた汗が吹き出してくる。

熱い…

俺はシャツの胸元を広げ手で風を送る。

「それは…こっ…ちの…セリ…フだよっ…」

俺のぼやきに冬花が息を切らしながらもキレ気味に返す。

彼女を見ると、髪をボサボサにして肩で息をしていた。

「あ、ごめん。ちょっとあいつらがウザくて…」

俺は頭を掻いて謝った。

「だから…って、いきなり…私をまきこま…ないでよっ」

冬花の怒りはおさまらず、怨めしい目で俺を見上げる。

「バスケの特訓付き合ってやったんだしチャラにしてくれよ」

俺は苦笑いで彼女の頭を撫でる。

すると冬花はぶすくれた顔をして黙った。