弥生先生を送って帰ってきた瑛先生は、お仕事に戻ってしまったの。
忙しいのに、お母さんのためにお出かけしたのね。
本当に優しいなぁ……
先生のお仕事が終わったのは、渉が寝る頃。
「おやすみなさい」 を言いに行った渉についていって、わたしもお部屋にい
れてもらった。
渉が部屋を出ていくと、「たまには飲もうかな」 と先生の声がした。
”わぁ、キレイな色。それ、美味しいの?”
「琥珀色、綺麗だろう?」
”キレイ……”
「蒼色と瑠璃色って、似た色なんだよ。青の仲間だね。藍色もそうかな」
”ふぅん、そうなんだ”
「でも、少しずつ違ってる」
”だから?”
「どうしてあんなこと言い出したのかな」
”どんなこと?”
「連れておいでって、なぜ彼女なんだ? わからないな。
まぁ、いつものカンかな」
”カンってなぁに?”
「母さん、ふだんはのほほんとしてるのに、
ときどき鋭いことを言い出すんだよな。勘で動いてる人だからね」
”何が鋭いの? ねぇ”
瑛先生のお顔をじっと見つめたけれど、琥珀色のグラスを持ったまま黙っ
ちゃった。
似た色なのに、違う色……
それって、なぞなぞみたいね。