――そして、一門の男たちが、納経するべく向かった厳島の社から帰ってきた。 「途中で船が嵐に遭ってな」 重三郎を寝かしつけていた経子は、横にいる夫の言葉に目を見開く。 「大事無い故」 妻のその様子を見た重盛は小さく笑って答える。 「されど…大変であったのでしょうな…?」 「……経子。海は時としてその姿を変える」 (…殿?) 突然話し出す重盛に驚きつつも、経子は耳を傾ける。