「へぇ。けっこういい出来だな。なあ、由衣?」

新車プロモーション当日と同じ流れで、ネットの流れ具合やナレーションの確認をすると、聡士の顔はさっきまでとは全く違って明るくなった。

なんだかんだ言っても、仕事が好きな人なんだと、改めて思ったのだった。

「うん。これなら、完璧よ」

後ろで見守っていた大翔は、満足そうな笑顔を浮かべている。

「楽しみね。大翔もありがとう。これで当日まで大丈夫よ」

「それなら良かったよ。聡士、時間は大丈夫か?」

「いや、あまり良くないから、そろそろ行くよ」

聡士は、出来栄えがよほど満足だったのか、笑顔を浮かべて上着を羽織った。

「じゃあな。次は当日に」

私の方は見ないで大翔にそれだけ言うと、聡士は部屋を出て行ったのだった。

「あいつ、かなり気に入ったんだな」

二人になった室内で、片付けをする大翔を手伝いながら頷いた。

「うん。仕事の事になると張り切るのよね」

「学生の頃から、一生懸命になると突き詰めるタイプだったな」

懐かしそうに、大翔はそう言った。

突き詰めるタイプか。

それには納得だ。

恋にもそうに違いない。

「なあ由衣、今夜は俺の家に来ないか?」

「家!?」

「ああ。前の家とは違ってるんだけど、似たようなアパートなんだ」

家…。

戸惑う気持ちも嘘ではないけれど、向い合おう。

大翔とは、ずっとそういう関係だったんだから。

二年前までは…。

「うん。行く。今日は早く終われるの。待っておくから」

「俺も今日は早く終われるんだ。19時頃に会社の近くへ迎えに行くよ」

どうやら今日も、車らしい。

私はそれに頷くと、会社へと戻ったのだった。

聡士は態度にこそ出ているものの、しつこく言ってくることもなく安心だ。

結局、私はその程度の存在だったということ。

分かって良かったんだ。

亜子の言っていた内容も気にはなるけれど、これ以上聡士がなにもしてこないなら、それで解決だ。

それより、今夜を楽しみにしていよう。

久しぶりの大翔との時間を…。