「書庫整理お疲れさん!どうだったか?うまく出来たか?」
「えっ!?」
昼休憩前、書庫整理を終えた私たちに、課長が声をかけてきた。
「綺麗に資料を並べ替えられたかって、聞いてるんだよ。だいぶ目茶苦茶だったからなあ」
「あ…はい、それはもちろんです」
驚いた。
聡士との事を言われているはずがないのに、こんな風にドキッと緊張するのは、どこかに罪悪感がある証拠だ。
それなのに、聡士の方は表情ひとつ変えていない。
「ありがとな。お疲れさん」
課長は満足そうにそう言うと、自席へと戻って行った。
すると、それを見計らったかの様に、聡士が声をかけてきたのだった。
「佐倉、昼一緒に行かないか?」
「え?ああ、いいわよ」
そういえば、昔からこんな感じだったかもしれない。
大翔と付き合っていた頃も、何かとパニクるのは私で。
そんな私を、大翔はいつも妹みたいに扱っていたっけ…。
カバンを手に取り、聡士の後をついて行きながら、バックの中で携帯のバイブが鳴っている事に気付いた。
メールみたいだけれど、こんな時間に来るメールは、だいたい宣伝系だ。
後で確認すればいいかと思いつつ、案外広い聡士の背中に、ドキドキと不覚にもときめいてしまっている。
すると聡士は、振り返って言った。
「佐倉、今日はイタリアンでいい?安いけど、うまい店を見つけたんだ」
「うん!いいよ。行こう」
そう返事をした私に、聡士は優しく微笑んだ。
その仕草にまで、胸がキュンとなる。
年甲斐もないな私…。
今夜も、また一緒なのに、こんな事でドキドキしてしまうなんて。
何をときめているのだろう。
私たちは恋人同士でもなければ、お互い好き合っているわけでもないのに。
それでも思ってしまう。
聡士と過ごす時間は、楽しいって…。

