「…何?朝練遅れた訳?」

聞きあきたくらい聞いた男子独特の声に私は振り向いた。


「……徹!!」



振り向いた先にいたのは、私の通う高校の制服を着た男子。

その男子は私の驚いた顔を見て笑った。

「そんなに驚くことないだろ」

「だって徹こそ朝練…」

「パーカッションは今日休み」

「えっいいな!」

「寝坊して朝練さぼる誰かさんとは違うから」

「…うるさい」


私の隣を歩く[徹]と呼ばれる男子。


佐伯 徹


私と赤ちゃんの頃からの腐れ縁。

背が高くて漆黒とも言える黒髪。チャラチャラしすぎない徹は学校のアイドル…なんだって。

まぁモテる分類だと思うけど私はずっと一緒にいたからあんまりわかんないや〜

そんな徹とは一緒に吹奏楽部に入ってる。

しかもここの辺りに住んでる高校生は私と徹しかいないから登下校はほとんど一緒なんだ…

まぁ徹はいいやつだし、ある意味親友って感じ。


そんな徹と駅に向かって歩く。

「…昨日舞依さんの怒鳴り声が聞こえてきたんだけどなんで?」

「えっ!?まさかそっちの家まで聞こえてたの!?」

「いや、街からの帰りで家の前通ったから」

「あ…まぁ…ね……」

「何?気になる」

「お姉ちゃんの新しい服…破っちゃってさ…」

ぽりぽりと頭をかいてみせる。

お姉ちゃん…今度合コンに来ていく勝負服だったらしく…

かなりの剣幕で叱られた…
「……フフッ…」

「笑うなよ〜!!弁償だから今度買いに行けって…」

「それはシイが悪いな。」

「あ―お姉ちゃんの肩持つんだ!!」

「…だって舞依さんキレると怖い…」

「わっ!!お姉ちゃんに言っとこ〜」

「お、おい!そりゃないだろ!」

「どうしよっかな〜」

―――――――…

なんて話してたら駅に着いた。

ゆっくり話してたから学校行きの汽車が来てた。徹と一緒に乗り込み、座席に座る。


ふと、今日見た夢の内容を思い出した。

ま、あれは夢じゃなくて、昔あったほんとのコトなんだけどね。

あれは幼稚園の時だったかな?私は不覚にも徹のコトが好きだった。だけどリカちゃんっていう子も徹のコトが好きで…

そんな時に幼い徹が

[じゃんけんで勝った方が僕のこと好きってことね]
って…

なんか当時は名案だったのかもしれないけど、別に好きかどうかをじゃんけんで決めなくてもいいじゃん!?って今はそう思う。

けど結果は、夢の通り、

リカちゃんに見事

負けちゃった

って訳です〜

ま、どうでもいいけどね!!

ふと隣を見ると耳にイヤホンを着けた徹。


じっと見ていると…

「……………フッ」

軽く笑ってイヤホンの片方を私に差しだしてくれた。さすが徹!わかってる!!

耳に当てると今度コンクールで演奏する曲が流れてくる。

「いい曲だね」

「うん」

徹の服の柔軟材の香りがする…



さっき、音楽を聴いてる徹の顔に少し見とれてたってことは黙っておこうっと……