「え……何、ここ?」


目の前には、大きな立派な門。

両サイドを確認しても同じ柵で囲われてる。


これって……同じ敷地って事よね?


よくテレビに出てきて
『わー凄い家! こんな家に住む人は、宝くじなんて当たっても喜ばないんだろうなぁ』
なんて思う家が……実際に目に写る。


高そうな表札には“江田”の文字。


フッと鼻で笑い、閉まりかけたタクシーのドアを止めた。


「運転手さーん! ここじゃないって。
この辺に違う“江田”あるでしょ?」

「えっ? お客さんの言ったのここですよ?」


キョトンとするタクシーの運転手さんに、キョトンとする私。


――駅から角を曲がった一戸建ての“江田”って家。って言えばわかるから。

確かに美鶴が言ったセリフ。


振り返り、また立派な門を見つめながらポカーンと開いた口。


美鶴って……


こんな金持ちなのぉー!?


後で静かに走り去ったタクシーの音が聞こえた。