そんな中、先に口を開いたのは、琴さんだった。
「美鶴。 ……離して?」
俺が掴む腕を、もう片方の手で必死に外そうとする。
でも、俺も小さな抵抗をみせる。
掴んだ腕を離したら今度こそ終わり。そう思うから。
ギュッと力を入れた。
「ね、美鶴。私、仕事の途中だし……ね?」
まるで子供をあやすかのように宥める。
そんな扱いに少し腹が立った。
でもしてる事は、ガキ。
仕事中の琴さんを無理矢理引っ張り込み、話もしないのに腕を離さない。
自分でもわかってる。
でも、どうしたらいい?
どうすれば貴女と、また一緒に居れる?
「美鶴……どうしたの?」
俺は、ただのガキだね。
本当に、ただのガキだ。
こんなにも手が震えてる……。
これ以上、貴女の時間を束縛出来ないとわかって。
それなのに、貴女に何も言えなくて。
でも、貴女に伝えたい事があって。
……それを言おうと思うだけで、こんなにも手が震えるだなんて。

