いつも誘って来る女達。
今まで1回も誘った事なんてない。
だけど……俺から誘った。
勿論、大喜びで、来てくれたよ?
そして、わざと琴さんの店の前を通ったんだ。
タイミングよく店から出て来た琴さんが目に入った。
その喋ってる男が……元彼なの?
「美鶴君ー行こ~」
女の呼び声で、俺に気づいた琴さんと目が合った。
少し驚いた表情をしたものの、すぐ俺から目を離して目の前の男との会話に戻る。
それを呆然と見つめてた俺の腕に絡みつく、知らない女の腕。
引っ張られた俺は、その場を後にしたんだ。
振り返らない。
だって貴女は、楽しそうに笑っているだろうから。
俺じゃない男に。
俺は、貴女が哀しい表情で俺を見てた事も知らず。
そのまま、女と腕を組んで歩いて行ったんだ。
毎日クラブに入り浸る。
それでも、琴さんばっかり頭に浮かぶ。
自分で自分が嫌になるほどだ。
入って来た奴等が口にした“雨”の言葉。
その言葉を聞いて体が勝手に店を飛び出した。

