「あたしなら、出来る」



 あまりに意識を集中したせいか、少し息が上がっている。

 だが、レオンの表情は険しかった。



「何してんだよ。例えこの景色を変えても、これは所詮凛々子のものなんだ。テルラの人間にとっては幻でしかねェんだよ。だからこんな事をしても無駄なんだ。あいつらにまた浸食されるだけだ」

「大丈夫よ。浸食されたとしても、また創る」

「だから、そんなことしたって何も変わらねぇんだよ! それに凛々子の精神が持たねェだろ!!」

「やってみなくちゃ分からないでしょ!!」



 どんだけ頑固なんだと呟いて、レオンは遠くを見つめた。



「……来た」



 その気配を察して、凛々子も息を飲む。

 独特の殺気を放ちながらこっちに向かって来る集団。



「アルマ…!!」



 アルマの集団に気付いたテルラの人々は、ここから逃げ出そうと一斉にバラバラに動き出した。

 その人々の波に流されないように、凛々子は両足に力を込める。

 アルマは真っ直ぐに、凛々子に向かって来る。

 レオンは、その手にナイフを持ち、身構えた。



「凛々子」



 呼び掛けられて、凛々子はレオンの後ろ姿を見た。



「オマエには、本当に感謝してる。この景色、まるで昔のテルラそのものだ」

「うん。でもこれは、レオンが教えてくれたんだよ」



 アルマはどんどんこっちに近付いて来ていた。

 何故か、アルマが通った道筋は、また元の不毛の大地に戻っている。

 レオンに悟られないように振る舞ってはいるが、凛々子はその度に頭に激痛を感じていた。

 レオンはアルマに向かって走り出す。



「レオン!!」

「俺は絶対に…負けねェ!!!!」



 止める間もなく。

 凛々子はレオンの後を追おうとした。

 だが、いきなり腕を掴まれる。



「なっ…何!?」



 振り向くと、1人のテルラの人間が無表情のまま凛々子の腕を掴み、こっちを見つめていた。

 言葉を発する訳ではなく、彼が何を訴えかけているのか、分からない。

 だが、言わずにはいられなかった。



「何してんのよ!! もっとしっかりしてよ、あんた達の故郷でしょ!! それくらいちゃんと自分で守りなさいよ!!」



 聞いているのか、聞いていないのか。