「また創ろう、レオン。前みたいなテルラを」



 凛々子の言葉に、レオンは少し驚いた様子だった。

 考えていなかった訳ではないが、今のテルラの人間はもう、気力を失っている。



「それが出来るのは、人間だけなんだって。だから、きっと出来るよ」



 笑顔を浮かべ、凛々子は言った。

 その顔は自信に満ちている。

 レオンはそんな凛々子の表情を見て、そうだな、と頷く。

 その時。

 たった今立っているこの砂浜が、まるで流砂のように流れ始めた。

 みるみるうちに足が地面に埋まって行く。



「なっ…何よこれ!?」

「掴まれ!!」



 たじろぐ凛々子に、レオンが手を伸ばす。

 凛々子は必死で、その手を掴んだ。

 二人はきりもみ状態になりながら、砂と一緒に流されていく。

 口も目も鼻も耳も、あらゆる場所に砂粒が入る。

 だが、絶対に離してやるもんか、と、凛々子は掴んだ両手に力を込めた。

 やっと身体が止まり、恐る恐る目を開ける。

 と、次の瞬間。

 信じられない光景に、凛々子は目を疑った。

 周りに群がるようにしているのは、テルラの人々だった。

 前に見た時と同じ、みんな無表情、そして同じような服装。

 個性のない、のっぺらぼう集団。

 凛々子とレオンを中心に、二人の周囲を取り囲むようにして立っている。

 それだけではなく、テルラの人々は追いすがるように凛々子に向かって手を伸ばしている。

 ゆらゆら、ゆらゆらとざわめきながら、ただただ、凛々子に求めているのだ。

 安心して暮らせる、潤った場所を。

 そんな様子を見て、凛々子はアルマに襲われた時のような恐怖を感じずにはいられなかった。

 レオンは凛々子の隣に立ち、その集団を睨み付けている。

 凛々子も立ち上がって見渡すと、景色はまた不毛な大地に変わっていた。



「何だよ。せっかく2人でいい景色を堪能してたのにな」



 吐き捨てるように言うレオンの背中に、凛々子は手を添えた。



「大丈夫。創るって、言ったでしょ」



 凛々子がこのテルラに戻ってきてからずっとレオンに言おうとしていて、切り出すタイミングを逃していたが。

 こうなったら、言葉で伝えるよりも、実行したほうが早いような気がする。

 きっと、出来る。

 何故か、凛々子は確信していた。

 この世界のカラクリ。

 もう、分かった。

 凛々子は一歩、前に出た。

 そして、ゆっくりと息を吸って、意識を集中させる。



「凛々子…?」



 何をするのかと、レオンは聞いた。



「創るの。壊された、このテルラを」



 凛々子が言った瞬間、不毛の大地は草原に変わる。

 テルラの人々は、いきなり変わった景色に、ざわざわと辺りを見回している。