僕はその時、なんの根拠もなく、一番だと思いこんでいた。 予選をトップで通過した。 予選はテープ審査だったんだ。 母さんは気合いを入れて、僕のトランペットの先生を変えたり、一流のピアニストを呼んだりして、とにかく一番をとろうと思った。 僕に敵はいない。 こっちには一流の先生もピアニストもいる。 負けるはずない。 そう思って僕はソロ・コンテストの会場で自分の曲を発表した。 自分は、最高の出来栄えだと思った。 それなのに。