プロローグ




輝く金色の楽器を片手に、僕は舞台の裏で自分の順番を待っていた。



生まれてから二度目の、トランペットのソロ・コンテスト。



僕の前の演奏は、アーバンの「華麗なる幻想曲」


これは絶対に忘れもしない。



なぜなら、この演奏者は、自分よりも五才も年上で、そして考えもなにもかもお子様だった僕は、自分のひとつ前の演奏者の演奏を聞いて、


一番になること間違いなさそう!なんてお粗末な考えを持っていたのだ。



アーバンの「華麗なる幻想曲」は、真っ黄色な本の第二巻に載っている。


音楽大学の入試にもよく使われる一曲で、だいたいの人が、『テーマ』、『バリエーション一番』、そして『バリエーション二番』を演奏する。


聞いたことのあるメロディが聞こえてくる。