ザッザッザッ
ガツンッ
ツンッ
ガッ


ザッザッザッ
カツンッ
ザッザッザッ


「……あああ……」


ため息混じりに、母の苦痛は呟きとなった。
それを更に助長させる様に、父の雪かきは止まらない。


「もういい! わかった。もう、母さんはどうなっても知らない!」


母は正座をしていた足を崩しながら、半ば投げやりになりながらそう言い放つ。

ああ、母の悪い癖が出た、と私は密かに思う。

普段の近所付き合いやらで、よそ行きの笑顔や愛想、体裁を守るための美徳を心得てはいても、基本的には母もあっけらかんとした性格なのだ。
玄太の奔放な性格は、間違いなく母譲りでもある。


「結婚でも何でもすればいいけどね、それなりに大人の責任は果たしなさいよ? 面倒な事は、母さん嫌いなんだから。弥生さんのご両親とか、父さんとか。玄太、あなたがきちんと解決しなさいよ? 母さんは、そうゆうの嫌よ!」


そんな母の罵声を浴びながら、ふむふむ、と軽い調子で頷き、玄太は煎餅を頬張っている。
弥生ちゃんはキョロキョロとしながら、母と玄太の両方の顔を見比べて、妙にのんびりとした様子だ。