初めてのカラオケボックス。

うさぎは珍しそうに狭い室内を見回し、手当たり次第に色んなボタンを押そうとする。


「ダメ、ダメ。
やめて、うさぎサマ。」


「むぅ。」


薫に手を捕まれたうさぎは、不服そうにしながらも促されるまま席に着いた。

薫はその正面のソファーに腰を下ろし、軽く彼女を睨む。


「…良かったのか?
景時置いてきて。」


「うむ。

実はな、薫。」


うさぎが少し身を乗り出した。

大吾と祥子と小鞠はドリンクバーで飲み物を調達している。

つまり、美しい顔を寄せてくるうさぎと、薄暗く狭い部屋で二人キリ…


(ナニ言い出す気?
てか、ナニ? この空気。)


薫はなんとなく居心地が悪くなり、少し視線を逸らした。