『もう、尚。今日もこんな所でサボって』


昨日と同じ、おせっかいな高瀬が俺を呼びに来た



『……ど、どうしたの?その顔』

俺の顔を見た高瀬は慌ててそばに寄ってきた



『うるせぇ。なんでもねーよ』


『なんでもなくないでしょ。もう…ほら』


高瀬はポケットからハンカチを取り出して、俺の顔に当てた


そう言えば中学の時もこいつはこうやって傷の心配をしてくれたっけ



『また喧嘩したんでしょ?そんな顔してたら余計みんなに怖がられちゃうよ』



高瀬の白いハンカチは俺の血で汚れてしまっていた



『別に大丈夫だから、お前は早く教室戻れ』


俺は不自然に高瀬と距離をとった


意味もなく近寄ってくる人間は嘘臭くて嫌いだけど、高瀬には全く嫌悪感が湧かない


だってこいつは誰とでも平等に接するから



『その前に保健室だよ。ほら』


高瀬が俺の手を引っ張ると同時に、俺はそれを引き返した



『……きゃっ』

女っぽい声で高瀬が俺の身体に倒れてくる



『なんでそんなに俺にかまうの?もしかして俺の事好きな訳?』



心とは裏腹にそんな言葉が口から出る


なんで俺は高瀬に対して意地悪を言いたくなるんだろうか?