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それから季節は過ぎて、俺は毎日スティックを握る日々

おかげで手には立派なまめが出来た




『本当に頑張ってるね。尚』



昼休みの音楽室。今日も高瀬は断りもなく付いてきた


そしていつも少し離れた所で俺の練習を見ている



頑張るもなにも俺はやりたい事をやってるだけ




今までの俺は欲しい物はなんでも手に入れてきた

でも手に入った途端にそれは輝きを失う



多分、きっと簡単に手に入ってしまったから


だから今度は自分から手を伸ばして、しがみついてやる


そしたら大切に出来るんじゃねーかって思っただけだ


ここ最近変わってきたものはいっぱいある。でも最も変わったのは……




『あ、そう言えば昨日亮がね---------』



高瀬の口から亮の話が増えた事


まぁ、これは予想外の出来事ではない



だって高瀬は亮の音楽を聞いた時から、あいつの世界に魅了されていた

こいつは恋愛初心者だ。きっかけさえあればすぐに落ちる




『お前最近あいつの話ばっかりだな。そんなに好きかよ』


自覚がない奴はイライラする

なのに高瀬は俺が見た事のない一面を見せた





『………うん。好き』


真っ赤な顔して照れる高瀬を見て、俺はますます苛立ちを覚えた


------------勝手にしろ。
俺には関係ない