『……わざわざ待ち伏せかよ。何の話?』


しぶしぶ乗り込んだ車内で俺は不機嫌だった


余計な事を喋られないようにみんなには知り合いだと嘘を付いたけど、納得している顔ではなかった


----------くそ、バレたくなかったのに。


せっかく自分で見つけた道なのに、家の事情で潰されるのはもうごめんだ




『最近真っ直ぐ家に帰ってないみたいだね。運転手の車にも乗らないって聞いたよ』


兄貴との空間はやけに息苦しい。用がなければ会話がない寂しい兄弟関係だ



『それで説教でもしに来たって?兄貴も暇なんだな』


暇に決まってる。親父のコネで大学に入って親父の金で遊んでるんだから




『尚はいつまで経っても子供だな。そうやって反抗して何の特がある?』


『………』


『俺は父さんに尚の事を宜しくと言われてるんだよ?お前が迷惑かけると俺の評価まで下がるだろ』



その評価って誰が決めんの?本当に胸くそ悪い




『いいか?お前は言われた事をやってればいい。簡単だろ?俺の足まで引っ張らないでくれよ』



その兄貴の言葉に何かの糸がキレた



---------ドンッ!!!!!!!


分厚い後部座席の窓をおもっきり殴り、その音が車内に響いた



『はっ、簡単?簡単だよ。だからつまんねーんだよ。そんな人生、俺には何の価値もない』