ドラム出来るやつなんて山ほど居るし、こんな初心者わざわざいれる必要ない
それにプロを目指してるなら尚更俺は邪魔なだけだ
『……お前だって腹の中じゃ俺の事笑ってんだろ?』
ドラムなんて出来る訳ないって。音楽始めるには遅すぎる年齢だって
『……どうして?笑ってないよ』
亮の足がピタリと止まる。この善人面(ぜんにんづら)が妙に気にさわりやがる
『プロになりてぇんだろ?だったら……』
『だって尚は音楽やりたかったんでしょ?』
亮の真っ直ぐな目が俺を突き刺す
確かに音楽はやりたい。でも音楽じゃなきゃいけない理由はどこにもない
すると、亮は俺の気持ちを見透かすようにこんな事を言った
『……多分、音楽始めるきっかけなんてそれだけで十分なんだよ』
『………』
『それに、尚は簡単に諦めない人に見えたから』
いつか俺はこの日の事を思い出して懐かしむ日は来るだろうか?
もし将来、俺が音楽の世界に居たら多分こいつのおかげになると思う
曖昧だったんだ。俺の音楽に対しての気持ちなんて
ただなんとなく音楽に興味が湧いて、やってみたいと思っただけ
そんな俺をこいつは受け入れてくれた
亮の目に俺が諦めない人に見えるなら、意地でもそうゆう人間になるしかねーじゃねーか