『………よう』


車から降りた俺はあたかも高瀬の後ろから歩いてきたように装った




『尚、おはよう』


高瀬はいつもと変わらない笑顔を俺に向けた


その視線の向こう側で、高級車が走り去って行くのが見える


あの運転手には悪いと思うけど、俺は親父や兄貴のようになりたくない



『昨日楽しかったね。鉄と亮もいい人みたいだし。また店長が尚連れて来いって言ってたよ』



高瀬は昨日バイト中にも関わらずみんなの雑談に参加していた

まぁ、その雑談の中に店長も居るんだから文句は言えねーよな


雑談と言っても俺以外の奴らが盛り上がってただけで、俺は参加していない


でもあの店長は絶対俺を見透かしている


俺が亮や鉄に対して嫉妬心のようなものを持ってる事


だからまた連れて来いなんて言ってんだよ。くそ野郎


『今日も行く?私バイトだけど』


ここで行ったら店長の思うツボだ

絶対俺を見て心の中で笑ってやがる



『………尚?』



俺はギュッと拳を握り、自分のプライドと戦った。その結果は………



『………行くよ』



プライドなんて捨ててやる

親父が作ったレールの上にないものが俺は欲しい