うつむいていた私は顔をあげて、お母様を睨みつけた。

お母様も、私がそんな態度に出たのは初めてに近かったから多少ひるんだ様子だ。


「あなたの機嫌に、いちいち私を巻き込まないでください。奏志朗が帰ってこないのは、私のせいじゃないし、それで機嫌を悪くして私に八つ当たりするのはおかしいと思わないんですか⁉︎こっちの身にもなれよ‼︎」


そう言って、持っていたスクールバックを床に投げつけた。

「「キャッ!!」」

お母様と何人かの家政婦さんが、悲鳴をあげたが、そんな人たちのことは気にせず、バッグをそのままにして、玄関からすぐの左右ふたてに分かれている階段の、左の方から二階の自分の部屋へあがった。
ふたてに分かれているくせに、同じところに着くこの階段。私はいつも左から上がっている。


溝口は一緒には上がってこなかった。

多分バッグを拾って、今日のことをお母様に、お父様に伝えた通りに話すのだろう。


多分話を聞いたらお母様が部屋まで来て、「どこか悪いのか、なにかあったのか」としつこく聞いてくる。


それに答えるだけの元気は私にはない。