君に出会わなければ…





「おやすみなさい。」



そう言って、まだ何か言いたげな2人に頭を下げ部屋を出た。





ドアを閉めた事を確認して、そのまま後ろに寄りかかる。





自分の人生を恨む事は幾度となくあったが、今日ほど絶望した日はない。




「お嬢様。」





「溝口。」










いつの間にか、ドアの前で放心状態だった私の近くにいたのは、私の世話係の溝口。










溝口がうちにきたのは私が5歳の、彼が14歳の時。


父親が経営していた会社が倒産していまったのがきっかけだった。

彼の父親と昔から付き合いがあったお父様が、自分の秘書になることを条件に、借金を全額返済して彼の家族を救った。


それから彼と彼の家族はうちで暮らすようになった。


溝口は父から援助を受けて、大学を卒業。

そのあとは、父の会社に就職した。




いったん家を出て一人暮らしを始めたのだが、また戻って来て、そしてなぜかわからないが、私の執事として住み込みで働き始めたのだった。

いまだに、なぜ急に執事なんて付けることになったのか、なぜ溝口なのかは謎のまま一緒に過ごしている。








「明日の放課後、高城先生の所によってから帰る。」


高城先生とはとっても美人のお医者さんで、昔からお世話になってる人。


私がそう伝えると、溝口は私の明日のスケジュールをチェックしながら、一緒に階段を上がった。



「わかりました。なにかお体に?」


「ううん。

久しぶりに顔を出しとこうと思っただけ。」



なんてゆうのはウソ。

ちょっと相談してみようも思っていた。