君に出会わなければ…





突然胸の当たりに痛みがはしった。



凄まじい激痛に、おもわずフォークを落としてしまった。



「っつ…‼︎」


カラン…!


けれどそれも一瞬のことで、すぐに痛みは引いて少し違和感が残っているだけ。

ここのところ、同じような事がなんどかあって不安を覚えていた。



たいしたこと無いと言い聞かせているけれど、あまりに最近よく痛むし、痛みが増している気がして、何か悪いことが起こっているんじゃないかと。





「どうしたの、茉莉⁉︎」





突然の事で周りが見えていなかったが、胸を押さえる私を、心配そうに見つめる母を見て我に返る。




まだ話すのは早い。




それでなくても過保護な母の事だ。
話したところで話が大きくなるだけで、いい事が起こる気がしない。
原因がわかってから、話そうと思っていた。



「少し疲れてて。そろそろ部屋で休みます。」




「寝てないのか?」





父に聞かれて、思わずうつむく。




別に責められているわけではない、ただ都合の話をふられて、気まずいのである。




私はいつからかは覚えていないが、昔から重度の不眠症でずっと隠していたのだが、溝口が側にいるようになってかは必然と気づかれて、両親に報告がいってしまったのだった。



父には叱られてはいないが、少し気まずい話し合いをしてその事に関しては隠さないという約束をしたのだった。




今は通院をして、眠れない時は睡眠薬を飲んだりしている。今ではだいぶ良くなった。だから2人には、たまに薬を飲んでいる事は黙っていた。