「嫉妬しないでよ。」
「あんたね、わかっててやってるんだったら容赦しないわよ。」
「私は一つ屋根の下で暮らしてるんだから、勝敗がどっちについてるかなんて、考えるまでもないわよね。」
そう言って私は得意げに溝口を見ると、呆れたようにこっちを見てからゆずはを見た。
「ゆずは様、お嬢様のイタズラに引っかからないでください。
1人、話に参加できなかった事への当て付けですから。
放っておくのが、得策です。」
あーっと頷くゆずは。
後ろに立っている事が幸な溝口。
もし横に立っていたら私からの肘打ちをくらっていただろう。
ようやく話が途切れた。
父は咳払いして、こちらに身を乗り出して言った。
「茉莉、高校は男子校に行ってみないか?」
…うん?
「話が見えてこないんだけど、私に男装しろってこと?」
「いや、話を省略しすぎたな。」
ええ、それもとてつもなく。
父は話を続ける。
「私の知り合いで、学校を経営してる人がいるんだが近々共学校にしよと考えているらしいんだ。
その模擬試験という事で誰か入学してくれる中学生の女の子を探してたらしいんだよ。」
なるほど。
うんと相槌を打つ。
「それで茉莉にピッタリなんじゃないかと思ってね。
少し田舎の方にはなってしまうんだけど、海も近くにあって都会の人の目もあまりない。
全寮制だから一日中好きに過ごせる。
向こうも一年くらい試してみたいと言っていてねアメリカに行くまでそっちでゆっくりするのも悪くないだろ?」
「話はわかったけど、私1人で何百人もの男の中で暮らすなんて無理よ。」
「何言ってるの、私がいるわよ。」
腕を組んで、偉そうに座ってる幼馴染をまじまじと見る。
「何言ってんの。」
一緒に過ごそうと約束はしたが、ここまで私の事情に付き合わせるわけにはいかない。
「ここで私に合わせて人生棒に振ってどうするの。」
「茉莉、そんな言い方しなくてもいいだろ。」
「お父さんも止めるべきよ。人の娘さんを付き合わせちゃいけないって事くらいわかるじゃない。」
「茉莉、よく考えてみなさい。」
私の隣に座っていた母は、父がそう言うと手を握りしめてきた。

