「茉莉にも、会社の事を考えてほしくてな。」






待って。
それはないよ、お父様。





私の反応を伺う事なく話を進める父を、私は本気で恨みそうになる。






「そろそろ私も、適任者を見定めなくてはならないと思ってな。





そもそも奏志郎に継がせようと決めていたわけじゃないんだよ。






2人のどちらか、もしくは他の誰かに会社を任せる、それでもいいと思ってる。」






そこでだ。パチンと手を合わせて私と奏志郎を交互に見る父。







その目を見た時、私は疑問が浮かんだ。





果たして本心で奏志郎には継がせない気だろうか。





常に、仕事を優先してきた父ではあるが会社が内海から離れる事はしたくないはず。




世の中の流れは、色々変わってきてはいるが男社会なのはやはり根本的なところで変わらない。







奏志郎以外に適任者はいない。







見定める必要もない。





じゃあなぜ、こんなことを言い出したのか。