「亨くん、ちょっと苦しいよ……」


柔らかな声で言う香澄が、

さらに俺の心をくすぐる。


「ごめん。すごく嬉しくて、さ」


「私も、すごく嬉しい。

 亨くんからのその言葉、

 ずっとずうっと待ってたんだから」


“大学を卒業する時に、

 籍を入れよう”


そんなことを付き合い始めた当時、

言っていたことを今思い出す。


その言葉を香澄は覚えていて、

ずっと待っていたんだ。


何年も待たせてしまって、ごめん。


その想いで香澄を優しく抱き締める。


この柔らかくて愛しいぬくもりを、

もう二度と離さない、

と固く誓う。