けれどもその声を、
ちゃんと聞いてくれた者がいた。
「―――ようし、わかった!
俺が介錯してやる!!」
それは 野村どのの声だった。
野村どのは腹に小刀を当てて
今まさに腹を切らんと
していたところを、
それを投げ出し
大刀を抜いて駆けつけ、
俺の背後へぐるりと回った。
「野村 駒四郎!
最後のお世話を
させてもらうぜ!!」
野村どのと目が合うと、
お互い頷きあう。
(よかった。これで間に合う……)
安堵で意識が緩むと、
ゆきの笑顔がちらついた。
―――ゆき。
今 どこにいる?
俺達はここだ。
いつかでいい。
俺達を見つけてくれ。
そしてどうか、
幸せになってくれ。
いつも笑顔を絶やさぬような、
そんな 幸せな日々を
送ってくれ。
お前をいつも
見守っているから。
――――そして、
もしも……もしも 来世で
お前と再び
めぐり逢うことができたなら。
その時は 今度こそ
俺は――――。
「あの世で会おうぞ!八十治!!」
野村どのの声のあとに、
首に衝撃が走った。
俺の意識は
痛みや苦しみは
そして 想いは
すべてそこで 途切れた。
.