利勝さまと兄さまが出立してから、もう十日以上過ぎた。

 利勝さまも兄さまも、まだお戻りにならない。

 しばらく福良に滞在するというお話だから、「大丈夫」と 何度も心に言い聞かせる。



 大丈夫。

 きっとまだ、戦場に行ったりしない。



 私は 毎日ひまを見つけては、郭内にある諏方神社へとお参りに来ていた。


 皆さまの無事を、そしておふたりの無事を祈りに。


 手を合わせて祈ったまま、私は兄さまを思う。


 兄さま。ご無事でいらっしゃいますか?

 あれから毎日、日新館へお城へとかかりきりで詰めていたお父上さまも、援軍の要請にあわただしく越後口方面へと出陣してゆかれました。

 家の中が静かになりすぎてひどく淋しいです。

 兄さま。どうか 早く帰ってきて。

 一日でも早くその笑顔を見せて、私と母さまを安心させて下さい。