今日も私は、さき子さまの元へゆく。

 ここ最近は、何かと用事を作っては、さき子さまのお屋敷を(おとず)れていた。



 卵をいただいたからと、おすそ分けしたり。
 まつの実家から届いたお野菜を持って行ったり。


 母さまも事情をご存知だから、何かと気を配って私をさき子さまのところへ向かわせてくれる。


 だから今日も私は、永瀬邸へ足を運ぶ。




 ――――雄介さまのことがあったあと、永瀬家の皆さまには、さらにご不幸が続きました。


 利勝さまとさき子さまのお父上さまが、西軍に囚われてしまったのです。


 利勝さまのお父上さま、永瀬(ながせ) 丈之助(じょうのすけ)さまは、祐筆(ゆうひつ)(※文書を司る職・または貴人のそばにいて物を書くことを受け持つ人)として 容保さまのおそば近くに仕えておりましたが、

 このたび藩の密命を帯びて、水戸藩へ使いに出た帰りに西軍に捕えられてしまい、今は獄中の身でありました。