「なにゆえお前が それを望む? たとえまつがそう望んだとしても、それはお前に何の関係もないことだ。
 それにこれは 俺達がどうこうできる話じゃない。わかったら、もう二度と口にするな」



 ………あに、さま?



 いつもの兄さまらしからぬ厳しい物言いに、私は驚くばかりだった。


 兄さまは、はっとした表情を見せて、気まずそうに目をそらす。



 「……すまない。少しきつく言いすぎた。お前は病み上がりなのに」



 傷ついた表情の私を見て、執り成すかのように謝ってくれる。

 そんな優しさを見せてくれる兄さまだからこそ、すがりついてお願いしたいのに。



 「……兄さま……。まつは……まつは、恋をしているんです。ひそかに想う相手がいるんです。
 それなのに、他に想う方がいるのに、嫁ぐなんて可哀相です」



 今だからわかる、まつの気持ち。


 もし私だったら、黙って従うことができるだろうか?


 まつの心を思うとせつなくて、何とかしてほしくて、兄さまを見つめるけれど。