「まつ!まつ!」



 私はまつを探して台所へ向かう。
 けど、まつの姿はない。



 「まつは先程、奥さまのお部屋へ呼ばれていきましたよ?」



 井戸から汲んだ水を水瓶に移していた下男の(さく)じぃが、そう教えてくれた。



 「ありがとう!母さまのところね?」



 母さまのお部屋の前に行くと、ひと声かけて私は襖を開ける。



 (……わ……!)


 「……ゆきさま!おかえりなさいませ!」



 私の姿を認めて、まつは恥ずかしそうにそう言った。

 まつは白無垢用の布地をあてられて、頬を淡く染めて困った顔をしている。
 まつの腰のあたりで、母さまがしるしをつけていた。



 「ゆき、おかえりなさい。どお?まつ、きれいでしょう?」

 「はい!とても!」



 私は興奮状態。

 やはりお嫁さまというのは輝いて見える。
 いつだって憧れの存在なのだ。