うまく言い表せない気持ちに戸惑いながら、胸に手をあてる。

 そんな私に気づかずに、さき子さまは眉根を寄せて腕組みされた。
 さき子さまが渋っ面になると、本当に利勝さまそっくり。



 「本当に兄上は、あの子に甘いんだから!」



 鼻息も荒く文句を言う姿に、つい笑ってしまう。



 兄上は真面目で礼儀正しくて、そのうえとても優しくて。いつも私達を甘やかしてくれるの。
 だから私は、兄上がとてもとても大好きなのよ。

 そう常づねおっしゃっていた、さき子さま。

 ご自分もたっぷり甘やかしてもらっているんでしょうに。
 なんだかほほえましい。

 私も兄さまに、たくさん甘やかしてもらっているから。

 『兄さま』というのは、どこのお宅でも、あたたかくて優しい存在なのですね……?


 兄さまの笑顔が浮かんで、私は知らず微笑んでいた。