しかたなく、初めて「雄治さま」と、お呼びしたとき。

 利勝さまは驚いたように、一瞬 目を見開いたけど。
  「なんだよ」と、すぐに不機嫌な顔で返してきた。



 ……利勝さまが私にそのお顔を向ける時は、いつも決まって不機嫌な顔をしている。

 きつく口を結んで。心を見せないって感じで。

 兄さまに見せるお顔や、雄介さまに見せるお顔は、あんなにも生き生きしてるというのに。

 私には決して名を呼ばず、「おい、お前」とか、「チビ」としか呼んでくれない。



 ……できることなら、もう少し親しくなりたい。



 大切な兄さまのご友人だから。
 大好きなさき子さまの弟君だから。



 ………本当に、それだけ?