お姫様に花束を


……中に入ると、俺は言葉を失った。

これが本当に絶句というやつだろうか……。


……俺の目の前には鮮やかなブルーをした花の絨毯が広がっていた。


ビニールハウスいっぱいに広がる……ブルーの絨毯。


これは……。


「ビックリした?」


カノンがいたずらに成功した子供のような無邪気な笑顔を浮かべて聞いてきた。


「すげぇ驚いた……。
この花って……確か……」

「コアブリーよ」


そうだ……。

授業で習ったことがある……。


「コアブル王国にしか生息しない……夏に咲く、奇跡の花」


俺が思い出すようにそう言うと、カノンは嬉しそうに微笑んだ。


「そう。
正確にはコアブルでもごく一部の地域にしか生息しないの。
ここよりももう少し気温が低い地域でしか育たないの」


カノンはしゃがみこんで、綺麗なブルーの花弁をそっと優しく撫でた。