お姫様に花束を



カノンに連れてこられたのは、バルコニーから見えたあの広い庭だった。

真夏の太陽に照らされた芝生はとても綺麗に光っている。


あぁ……そういえばバルコニーでこの景色を見ながらカノンと二人で話したっけ。

ほんの少し前の話なのに……随分前の出来事のような気がした。


「……そういえば、芝生で一緒に寝転がるって約束したっけ」


カノンが歩きながら芝生を見て小さく呟いた。


「……あぁ。
ま、今寝転がったら暑くて大変だろうけど」

「ふふっ。そうね。
でも……いつか、守れたらいいな。
……約束」


……守ることができるのだろうか。

あの約束は……。

……きっと、俺がここから去ったら……もうカノンに会うことはない。


カノンだって……それは分かってるはず。

だから……さっきから遠くを見つめながら歩いてる。

もう……これが本当に最後だから。



「ここよ」

「ここって……え?」


突然、俺の目の前に現れたのは大きなビニールハウス。

何で庭にこんなものが……。


カノンは慣れた様子でビニールハウスへ入っていく。

俺も慌ててその後について中に入った……。