カノンが少し驚いたように俺を見る。
……やがて、少し諦めたように小さく頷く。
「……うん、分かった。
……ウェルスに送るように伝えておくから」
……そう言いながらカノンはスッ…と俺から離れる。
……そして、静かに視線をそらす。
「……あの時……」
カノンが視線をそらしたままポツリと呟く……。
……カノンがもう一度俺と視線を交えた時……カノンは目を潤ませたまま、柔らかな笑みを浮かべていた。
「あの時……助けてくれて、本当にありがとう」
……今のカノンの表情は……本当に綺麗で。
手を伸ばしても届かない……届いてはいけない存在で……。
……これでいいんだ、と心に自分で言い聞かせた。
「あのね……。
……最後に見せたい物があるの」
最後に私に付き合って、とカノンが俺の方に手を伸ばした……。

