「……昔から……」
……ポツリとカノンは俺の胸で小さく呟く。
「……昔から……恋愛なんかどうでもよかった。
……いくら好きな人ができても……最終的には国王様が決めた相手と結婚させられる。
……だから……恋愛なんて私には関係ない話だって……そう思ってたけどっ……」
……カノンがギュッと俺の服を掴む。
「っ……予想外だったな……。
リオンが現れるなんて……」
カノン……。
「……俺も予想外だった。
……まさか王女様と……さ」
「……聞かないの?」
「え?」
「何でさっき……止めたのか」
……俺は顔を上げたカノンのまだ少し潤んでいる瞳をじっと見つめた。
……聞かないよ。
だって……
「……カノンには守らなきゃいけない物があるから。
そのためには……」
……俺は一緒にいてはいけない。
「……カノン」
「ん……?」
「……俺……明日、帰るよ」

