「……私は国王様も王妃様もカノン様のことをとても愛していらっしゃるように見えますが」


……また。


「……ウェルスはいつもそう言う。
でも、私は……愛なんて感じたことない」

「……不器用ですからね。
皆さん」


ウェルスがとても小さな声で何かを呟いた。


「何か言った?」

「いえ、何も」


聞き返しても答えてくれない。

気になるけど、これ以上追及するのはやめよう。


「そういえば、カノン様。
バルコニーでリオン様ととても楽しそうに話していらっしゃいましたね」


ウェルスが突然話を変え、笑顔でそう言った。


「私……カノン様のあのような笑顔を拝見したのは、もう随分久しぶりのような気が致します」


ウェルスがまるで自分のことのように嬉しそうに微笑みながらそう言う。


「そう……かな」

「はい。
とても良いお顔をしていらっしゃいましたよ」


リオンにも言われた。

良い顔をしてるって……。

……だって、あの時……楽しかったから。

いつもはつまらない顔をして見ているバルコニーからの景色も……

……あの時は何だかいつもと違って見えたから。



……私はリオンと約束を交わした小指を見つめ、静かに微笑んだ。