「……私も昔はよくディランと遊んだわ。
……お兄様と一緒に」
お兄様……。
5年前に病気で亡くなられたロイ様のことか……。
「……今思えば、お兄様がいたからこそ成り立っていた関係だったのかも」
「ロイ様が……?」
「……どうやら私はお兄様がいなくなって変わってしまったらしいから」
……静かな口調でそう言うカノン。
その目に光は宿していなく……ただただ切なそうに揺れるばかりだった。
「……なんて。
ごめんなさい、変なこと話しちゃって」
「……いや」
取って付けたように笑うカノン。
それが心からの笑顔ではないことは出会って数日しか経ってない俺でもすぐに分かった。
「………ん?」
……その時。
俺は外が騒がしくなったのに気がついた。
何だかガヤガヤしている。
「ウェルスさんが来たんじゃないか?」
きっと、またSP達を引き連れて……。
だが、カノンは首を横に振った。
「違う……ウェルスじゃない……」
じゃあ、外で何かあったんだろうか。
ちょっと見に行ってみようか……。
……そう思ったその時。
コンコン
店のドアをノックする音が聞こえた。
あぁ、さっき『closed』にしたから……。
このまま居留守を使っても何か悪いし……適当に言い訳して追い返そう。
そう思い、ドアノブに手をかけてドアを開けようとすると……
「開けちゃダメ!!」

