「……美味しい……」


……そう呟いた瞬間。


……私の視界はボヤけた。

頬を伝う……大粒の雫。


止まらない……涙。


「っ……ぅっ……くっ……」


……何でかは分からない。

分からないけど……涙が止まらない。

こんなところで泣いたら余計にリオンを困らせてしまうだけなのに……

なのに……


「カノン……」

「っ……ごめっ……大丈夫……だからっ……」


途切れ途切れにそう言う……。


必死で流れる涙を手で拭う。

拭っても拭ってもこぼれ落ちてくる涙……。


もうどうしようもなくなった……その時。


涙を拭う私の手を……やんわりリオンが掴んだ。


そして私の手をそっと下に下ろすと……そのまま私の体をゆっくりと包み込んだ。


……時が止まったような気がした。

……驚いた。


……でも、冷え切った私の心には……リオンの体がとても温かく感じた。