中年親父は酔っ払っているようで、ニタニタ気持ち悪く笑いながら女の子の腕を掴んでいた。


「嫌っ……!」


女の子は何とか離れようともがいていた。


「何してるんだ!!」


俺が大声を出すと、酔っ払いの中年親父はビクッと体を反応させた。

それと同時に女の子から手が離れ、俺は女の子を自分の後ろへと引き寄せた。


「何って……ちょっと遊んでただけだよぉ……お姉ちゃん可愛いからさぁ……」


呂律が上手く回っていないし、何より気持ち悪い。


女の子がキュッと俺の服の裾を掴んだ。

その手は……小さく震えていた。


「いやぁ、こんなところで可愛い子と出会えるなんておじさんツイてるよなぁ……あはは」


あははじゃねぇよ。


俺が睨みつけると、酔っ払い親父はまたビクッと体を強張らせ「失礼しまぁす……」と気の抜けたような声を出しながら、いそいそと俺達の前から消えていった。



まったく……。


これだから酔っ払いは……。



俺が呆れたようにため息をつくと、クイッと服を引っ張られた。


「あの……」


可愛らしい声が聞こえて少し視線を下げると、女の子の大きな瞳がこちらを見つめていた。