「……それは母が勝手にしていることで、俺は関係ない」
……関係ないわけないのに。
「なぁ……カノン。
もうこういうのはやめよう。
昔みたいに仲良くやろうよ、な?」
……確かに昔はよく一緒に遊んだ。
お兄様も一緒に。
でも……
「ディラン、何をしているの」
突然、キンと耳に響くような高い声が聞こえた。
「……おば様」
……やって来たのはディランの母親。
おば様は私とディランを交互に見て、気味悪く口角を上げた。
「あら、カノン様。
せっかくの夕食会を滅茶苦茶にしたあなたがここで何をしているんですの?」
滅茶苦茶って……。
……まぁ、そうかもしれないけど。
「あなたの息子さんに呼び止められたのでお話をしていただけです」
「まぁ。
何のお話かしら。
王位を譲るお話?」
ふふっとおば様が上品に笑う。
この人は口を開けばこの話しかしない……。
「カノン様、悪いことは言いません。
やはり王位継承は辞退した方がよろしいのでは?」
「私は辞退するつもりはこれっぽっちもありませんので」
失礼します、と言ってこのまま去ろうとした。
これ以上この人と話をしていたくなかった。
「……ロイ様が次期国王だったら、納得できたんですけどね」
「っ……………」
また………。
「ロイ様は実に素晴らしいお方でしたわ。
あなたと血を分けた兄弟とは思えないぐらい」
「………………」
「国民もロイ様が国王になることを望んでいたし。
私達もロイ様でしたらこのようなことは言わないんですけれど……」
「………………」
「カノン様には誰も期待してないし……ねぇ?」
っ……………!!
……本当、嫌になる。
何でこの人は……。
……私を否定することしか言わないんだろう。
「カノン様!!」
廊下にウェルスの声が響く。
……私は構わず走った。
とにかくこの人の前から……逃げたくて。
逃げたくて……逃げたくて。

