「リオン、背中は大丈夫かの」

「背中?」


あ……そういえば、石ぶつけられたんだっけ。

あの時はすごい痛かったけど……すっかり忘れてた。


「もしあれがカノンに当たってケガでもしたらあの町民はタダでは済まなかったじゃろう。
リオンはカノンとあの町民、二人を守ったんじゃ」


ゲンさんが優しく微笑む。


俺が……二人を……。


カノンは俺の方を見て柔らかな笑みを見せると、石が当たった俺の背中を優しく撫でた。

カノンの手が温かくて、撫でられている感覚が何だかこそばゆくて……俺も思わず笑みを浮かべていた。


「……ディランといったかな。
お前さんはただギャンギャン騒ぐだけで何もしとらん。
そんなヤツに誰がなびくか」

「っ……………」


ディラン様を見てゲンさんは小さくため息をつく。


「お前さん、ミランダ様の息子じゃったな。
……本当に母親によく似ておる。
良い意味でも……悪い意味でも」


ディラン様は悔しそうに顔を歪める。

そして……


「……俺だって……。
……俺だって……分かってるよ……。
……本当は……」


……小さな声でそう言うと、ディラン様はクルッと体の向きを変えて走り去っていった。